レポートヒント~行政法~行政行為に手続き上の瑕疵はあるが、実体上の瑕疵がない場合

レポートヒント~行政法~行政行為に手続き上の瑕疵はあるが、実体上の瑕疵がない場合

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レポートヒント行政法 手続上の瑕疵

行政行為に手続き上の瑕疵はあるが、実体上の瑕疵がない場合、当該行為は違法であるとして取り消されるべきであると言えるか。

ポイント

手続に瑕疵がある場合における処分の効力について、明文規定が無いので問題となる。

この問題に対しては、

行政手続は実体的に正しい内容の決定を担保する手段にすぎないとする考え方

行政手続の意義を重視する考え方

がある。


行政手続は実体的に正しい内容の決定を担保する手段にすぎないとする考え方を採ると、

処分の結果が変わる可能性がないのであれば取り消すだけ無駄と考えるため、この場合、手続の瑕疵のみで処分のやり直しを求めても、取消は認められないとする

(行政の効率を図るという目的を重視する考えといえる。)


行政手続の意義を重視する考えでは、国民には正しい手続きがなされることについて手続的権利が保障されていることや、常に実体の判断を優先させることは手続規定が設けられたことの意義を著しく失わせてしまうことから、原則として手続上の瑕疵は直ちに取消事由になる。

考えられる具体例

手続上の瑕疵としては、聴聞、聴聞手続、理由付記、処分基準の設定・公表の瑕疵が考えられる。

聴聞

告知と聴聞の機会の付与

行政庁が行政処分をする前に、処分の相手方に処分の内容と理由を知らせ、処分の相手方の言い分を聞く手続をふむことで、処分の適法性と妥当性を担保し、国民の権利利益を保護する

第三者所有物没収事件(最判昭和37年11月28日)では「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは著しく不合理であって、憲法の容認しないところである」と判示された。

なお、憲法との関係について、成田新法事件(最判平成4年7月1日、百選124事件)では、「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、その全てが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」しかし、行政手続は刑事手続と性質において差異があり、また目的に応じて多種多様であるから「行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合衡量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない。」と示された。

文書閲覧

聴聞に際して処分の相手方が当該事案に関して文書等の記録を閲覧することをいう

行政庁の言い分がどのような証拠によって支えられているかを知ることによって、当事者は聴聞の段階で的確な意見を述べることができる

理由付記

行政処分をするに際して、その理由を処分書に付記して相手方に知らせることをいう
行政の判断の慎重、恣意の抑制、相手方の不服申立の便宜、相手方の説得、決定過程の公開 → 行政手続の公正性の確保、透明性の向上

判例(理由付記の程度)最判昭和60年1月22日(百選129事件)

「理由付記制度の趣旨にかんがみれば、一般旅券発給拒否通知書に付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として充分でないといわなければならない。」

根拠法条を示すだけでは理由付記として不十分ということは、情報公開条例の下での開示請求に対する非開示決定が争われた、最判平成4年12月10日(判例時報1453号116頁)でも判示されている。

また、最判昭和38年5月31日(行政判例百選130事件)では、
青色申告に係る更正処分の理由について「どの程度の記載をなすべきかは処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべき」とされた。

教科書の捉え方

塩野p319~322による。手続の瑕疵と処分の効力について、

実体が正しいと、手続をやり直しても、また同じ処分が行われるので、行政経済に反するという考え方もあり得る

しかし、行政手続法が制定されたこともあり、手続軽視の風潮を産まないためにも、聴聞や理由付記などが法律上求められているにもかかわらず、全くそれをしなかった、しないに等しかった場合は、原則として違法なものと解するべき

ちなみに理由付記や聴聞は行われたが、内容に不備があったとき・・・

判例の立場

・理由付記の不備の場合→独立の取消し(違法)事由になる(旅券発給拒否事件:最判昭和60年1月22日、129事件)
・聴聞手続の不備の場合→聴聞手続の瑕疵が結果に影響を及ぼす可能性がある場合のみ処分が違法になる

聴聞手続の瑕疵による取消しが認められた事例(個人タクシー事件) 最判昭和46年10月28日、百選122事件
XはY(東京陸運局長)に個人タクシー免許申請をしたが、聴聞を経た後、申請は却下されてしまった。Xは申請却下処分の取消訴訟を提起した

「本件におけるように、多数の者のうちから少数特定の者を、具体的個別的事実関係に基づき選択して免許の許否を決しようとする行政庁としては、事実の認定につき行政庁の独断を疑うことが客観的にもつともと認められるような不公正な手続をとつてはならないものと解せられる。すなわち、右(道路運送法)6条は抽象的な免許基準を定めているにすぎないのであるから、内部的にせよ、さらに、その趣旨を具体化した審査基準を設定し、これを公正かつ合理的に適用すべく、とくに、右基準の内容が微妙、高度の認定を要するようなものである等の場合には、右基準を適用するうえで必要とされる事項について、申請人に対し、その主張と証拠の提出の機会を与えなければならないというべきである。」本件手続は瑕疵あるものであり、却下処分は違法である。

聴聞手続の瑕疵による取消しが認められなかった事例(群馬中央バス事件)最判昭和50年5月29日、百選126事件
XはY(運輸大臣)に道路運送法に基づく一般乗合旅客自動車運送事業(つまりバス事業)の免許申請をした。Yは運輸審議会に諮問をおこなった。運輸審議会は公聴会を経た後Xの申請を却下すべきことをYに答申し、YはXの申請を却下した。Xは却下処分の取消しを求めて訴訟を提起した。

「諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれないこととなるものと解するのが相当である。」運輸審議会の公聴会の手続は不十分なものであるが、「仮に運輸審議会が、公聴会審理においてより具体的にXの申請計画の問題点を指摘し、この点に関する意見及び資料の提出を促したとしても、Xにおいて、運輸審議会の認定判断を左右するに足る意見及び資料を追加提出しうる可能性があつたとは認め難いのである。」してみると、結局において、運輸審議会の決定(答申)自体に瑕疵があるということはできない