レポート~民法~契約自由の原則とその制限

レポート~民法~契約自由の原則とその制限

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民法レポート

契約自由の原則とその制限について説明しなさい。

(1)契約自由の原則

中世社会の主流であった封建制度は、主従関係による一方的な契約が多く、支配される側にあった人々の自由は乏しかった。しかし、近代社会は、身分的羈束を否定し、自由主義や平等主義などといった考えを基に形成された。わが国の民法典もこの理念の影響を受け、「私的自治の原則」を採っている。私的自治の原則は、私法上の権利・義務の変動、とりわけ義務の負担は、それぞれの自由な意思に基づいてのみ成されるべきであるとし、公平性や妥当性を保障している。裁判所が権利・義務について判断するときには、当事者の意思で形成された内容に従うべきとされる。

すなわち、当事者の相対向した意思表示の合致によって成立する「契約」は、その成立によって当事者間に債権・債務の効果を発生させ、内容の履行強制や、不履行の場合の損害賠償請求ができる。このように、国家の干渉を受けず、自由な意思によって契約が行える原則を「契約自由の原則」という。

契約自由の原則の具体的内容としては、①契約を締結するかしないかは当事者の自由であるとする「締結の自由」、②契約を誰と締結しようが自由であるとする「相手方選択の自由」、③契約の内容は自由に決定できるとする「内容決定の自由」、④契約は当事者の意思の一致だけで成立し、特定の形式を必要としない「方式の自由」がある。

(2)契約自由の原則の制限

契約自由の原則は経済的自由(自由競争)を促し、資本主義体制の成長に寄与した。ところが、資本主義が発展すると、経済的・社会的な弱者と強者が形成されて問題となった。力関係に優劣が在る状況で契約自由の原則を適用した場合、契約内容を強者が弱者に、事実上押し付けるような事態が生じかねない。とくに大企業の誕生は、強者が弱者に対して一方的にする契約を作り出す危険性を強めた。そこで今日では、社会の変化に対応し、弱者の実質的な自由を回復するため、契約自由の原則に制限を設けている。前述した契約自由の原則の内容に即して述べたい。

①締結の自由

契約の締結をするかしないかは当事者の自由である。しかし、公益的な性格を有する業務については締結が強制されている。医師や薬剤師などでは契約に対して承諾義務が課せられている(医師法第19条、・歯科医師法第19条、薬剤師法第21条)。また、独占的性格を有する電気・ガス・水道などの供給業を行う企業(電気事業法第18条、ガス事業法第16条、水道法第15条)や鉄道・道路運送業(鉄道営業法第6条、道路運送法第15条)にも承諾義務が課せられている。

②相手方選択の自由

契約を締結する際に相手方を選択することは、当事者の自由とされている。ただ、労働組合から除名または脱退したときは解雇されるとするユニオンシップ制や、会社は労働組合員から採用しなければならないとするクローズドショップ制は、相手方選択の自由を制限するものとして設けられている(労働組合法第7条第1項)。

③内容決定の自由

当事者は、強行法規や公序良俗に反しない限り、いかなる内容の契約をするかは自由である。しかし、内容は当事者にとって重要な事項であって、社会的・経済的弱者の不利益が生じる部分が多い。そこで、弱者救済のために、内容決定に関する制限が多く設けられている。以下に主要な4点を挙げる。

第一に、経済的優位者の権利を制限することで弱者の保護が行われている。過度の利息徴収を禁止する利息制限法や、不動産の賃貸借契約における借主を保護する借地借家法がこの適例である。第二に、独占的性格を有する企業の締結する約款(付合契約)について国家が監督している。このような企業は、大衆を相手に大量に契約を行うため、相手方は一方的に定められた内容をそのまま承諾するほかなく、事実上、内容変更の自由がない。そこで、公平性や妥当性を確保すべく、約款の内容は国家の認可が必要とされている場合が多くある(電気事業法第19条、ガス事業法第17条、道路運送法第11条など)。最後に、事情の変化に対応した制限がある。契約が締結された後に、当事者が予想しなかった急激な経済事情の変動が生じ、当事者の一方が著しく不利益を被る場合は、契約内容の変更請求や契約の解除(大判昭和19・12・6民集23巻613頁)が認められている(事情変更の原則)。なお、契約内容が当初より著しく不当なときは、事情変更を待たずに裁判所が変更を命じうる(罹災都市借地借家臨時処理法第17条)。

④方式の自由

契約は当事者の意思の一致だけで成立するとされるが、契約の存在と内容を明確にするためや、契約締結を慎重とさせるために、一定の方式を要求する場合がある。たとえば、不動産物権の変動を目的とする行為が登記をしなければ完全な効力を生じないこと(民法第177条)、労働協約は書面によらなければ効力を生じないこと(労働組合法第14条)などがある。

これまで述べたように、資本主義の発達により生じた経済的弱者を保護するため、あるいは、近代の複雑化した経済社会において安全・迅速な取引が行われるために、契約自由の原則には制限が設けられている。

参考文献

我妻榮・有泉亨・川井健(2009)「民法2債権法(第3版)」勁草書房 209~216頁

近江幸治(2006)「民法講義Ⅴ契約法(第3版)」成文堂 5~9頁

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