レジュメ~法学~法の適用

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法学レジュメ、法の適用

現代法学入門〔第4版〕伊藤正己・加藤一郎編 参照

法と裁判

1.具体的事件への法の適用

・事件の処理としての裁判 ex.歩行者AがBの自動車に当てられケガ

①Bを犯罪として罰するかどうか(刑法)
②Bから治療費などの損害賠償をとれるか(民法)

[決めるのが法]

・裁判の基準となる法律・・・裁判規範・・・刑法や民法はその代表(抽象的なもの)

裁判官の行為規範である。すると、ある行為をした者に刑罰又は損害賠償をすべきということは、その行為をしてはいけないという一般人に対する行為規範が存在するということ。

・裁判規範の性質を持たない法

憲法や行政法には、組織規範や公務員の行為規範という性質を持つ規定が多い

2.裁判制度

・刑事事件と民事事件(一つの行為でも、別々の事件として)

刑事裁判・・・犯罪者を罰する   民事裁判・・・市民の権利義務の紛争を処理

↓           ↓

原告は国を代表する検察官    原告は権利を主張する者

↓           ↓

裁判手続きは刑事訴訟法     裁判手続きは民事訴訟法

刑事事件としては、不起訴になったり、起訴されても刑法上の過失がなければ無罪になったりする。

しかし、民事事件としては過失があったとして損害賠償が命じられることもある

一方だけの問題として扱われることが多い。たとえば契約違反は民事裁判だけ

公務執行妨害は刑事裁判だけ

行政事件(広い意味では民事事件)・・・行政庁の公権力の行使に関する訴訟

手続きは、行政事件訴訟法

・裁判所の組織

最高裁判所と下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)

家庭裁判所

家事事件・・・家族や相続など家庭に関するもの(離婚訴訟も)

少年事件・・・20才未満の少年の犯罪及び非行に関するもの

(地方裁判所と同格)→手続きは、家事事件は家事審判法で非公開の審判または調停の形。少年事件は少年法に定められ、審判の形で上訴は、高等裁判所への抗告、最高裁への特別抗告という特殊な形。

普通裁判所の裁判権の範囲(事物管轄)と三審制度

事実の認定に関する事実問題は民事では第2審まで刑事では第1審だけで審理。その上の審級では法律の解釈適用に関する法律問題についてしか上訴できない。

・司法権の独立と裁判官

裁判官による司法権の行使が、行政あるいは立法を担当する他の国家機関の干渉や影響を受けずに独立してなされることを、司法権の独立とか裁判官の独立と呼ぶ。

ex.明治24年の大津事件(死刑を無期徒刑にした)

裁判官の身分保障として、公の弾効によらなければ罷免されない。(憲法78条)

任命方法は、最高裁判所の長官は内閣の指名により天皇が任命し、他の14人は内閣が任命する。下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命する。裁判批判の是非。

・裁判と法曹(裁判官と検察官と弁護士)

検察の最高責任者は法務大臣であるが、検事総長を通じてのみ指揮できる。

弁護士に依頼せずに当事者自身で行う本人訴訟もかなりある。

弁護士は、単に当事者の主張を代弁するだけでなく、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する使命を持っている。(1条)

法曹とは法律家ということで、広くは、法学者も含めることもある。司法試験を通り、1年6月の司法研修所の教育を経る。

平成21年(2009)からは、裁判員制度が発足する・・・重要な刑事事件の第1審の裁判官に一般の国民から選ばれた裁判員が加わって裁判をする。

陪審制度は1審の事実認定だけ。その他一般国民が参加するものは、

知財訴訟・・・専門委員、家事事件・・・参与員、調停制度・・・調停委員 である

調停は合意により成立し、非公開である。

民事調停・・・民事調停法により、簡易裁判所または地方裁判所で行う

家事調停・・・家事審判法によって、家庭裁判所で行うもの

3.訴訟手続上の諸原則

・訴訟手続の定め

最高裁判所は規則制定権(訴訟に関する手続について規則を定める権限)を持つ

主要な手続は法律によって定められ、その細目は最高裁判所規則で定められている

・裁判公開の原則

公の秩序、善良の風俗を害する恐れがあるとき以外は、傍聴できる状態で審理をすることにより、秘密裁判を避け、裁判の公正を保障し、国民の信頼を高めるため、対審及び判決は公開の法廷で行う。調停や審判は非公開

・当事者主義(または弁論主義)・・・弁護士の力に左右される点がある

当事者が訴訟の主導権をもち、自己の主張を尽くし、裁判官は整理し、アンパイアの仕事をする。

対して職権主義は裁判官が主導権をもち、職権で審理を進める。

当事者主義でも裁判官は当事者に質問し、または立証を促すことができる(釈明権)

・自由心証主義

証拠調べの方法・・・証人尋問、専門家の鑑定、書面による書証、実物や実地の検証

どの証拠を信頼できるものとして採用するかどうかは裁判官の自由な判断

・挙証責任

刑事訴訟では、人権保障のうえから疑わしきは罰せずの原則

民事訴訟では、判定できないときは挙証すべき責任を負う者の側の負け

ex.医療事故・・・加害者としての医師の過失について、被害者が挙証責任を負う。自動車事故・・・加害者としての運転者に、過失のなかった挙証責任を負う

挙証責任の転換

一般的には、主張する原告が挙証責任を負う

4.強制執行

・裁判と強制執行

刑事裁判・・・国が判決の執行にあたる(刑務所など)

民事裁判・・・判決後、強制執行して目的を達する

・強制執行と債務名義

権利の確定。強制執行。認められた文書を債務名義という

・判決以外の債務名義(判決は債務名義の基本)

調停調書、和解調書、支払督促、執行証書

支払督促・・・裁判所が申立てに基づき、相手方の言い分を調べずに支払うよう命ずるもので、相手方が2週間以内に異議を申立てると訴訟に移行するが、異議を申立てないと仮執行宣言が付され、この仮執行宣言付支払督促が債務名義となる

執行証書・・・公証人が作った公正証書で、直ちに強制執行を受けてもよいという、執行文言を記載したもの

裁判所の関与なしに作成できるので、紛争防止に利用される

物の引渡しなどには使えない

裁判の基準となるもの

・法源・・・裁判官のよるべき基準

制度上の法源・・・制定法と慣習法

事実上の法源・・・判例、学説、条理

1.制定法

成文法  不文法(慣習法・判例)

制定法は判例に優越するが、社会の変化に伴って改変されるべき

・制定法の種類

法律の上に国家の基本法である憲法

制定法の大部分は国会で作られる国家法、その他に地方公共団体の条例がある

政令・・・内閣の定めた法規  省令・・・各省の定めた法規  どちらも、法律の規定を実施するための細目を定めるもの。国民の権利義務に関する事項を定めたり、罰則を設けたりするについては、「政令の定めるところによる」というような法律の委任が必要。

特殊な法規・・・議院規則、最高裁判所規則、各行政委員会の定める委員会規則、人事院規則

条例・・・公安条例、騒音防止条例など

私人間の契約も、規範としての法的効力を持つ(一種の法)

定款・・・その団体内部では法としての働き

付合契約(付従契約)・・・一方的に内容が決められ、他方の当事者が包括的にそれを承認するか否かの自由しかもたない契約のこと

・法の段階的構造と違憲命令審査権

法の形式的効力・・・上位の法規は下位の法規に優越し、上位の法規に抵触する下位の法規は効力をもたない

違憲(憲法に違反する)法令、違憲法令審査権・・・違憲の法律の効力を審査

具体的な事件に関連して、それに対する適用法規の効力が問題とされた場合に、はじめて裁判所がその違憲性(合憲性)の審査をする。

憲法優位説と条約優位説、高度の政治性から司法審査権の範囲外

・特別法は一般法に優先する

債権の消滅時効の期間・・・民法では10年、商法では5年

商法の規定は、私人間の債権のうち、商取引によって生じた債権についての特則

つまり、商取引については商法が民法に優先して適用される

手形の消滅時効については、特別法である手形法の規定が適用

・後法は前法に優先する(後法は前法を廃する)

但し、一般法と特別法の間では、特別法優先の原則で効力が決まる

・法律不遡及の原則(法規は遡及効をもたない)

特に刑罰については、事後法の禁止(遡及処罰の禁止)

戦後の家族法の改正には、遡及効の規定がおかれた

・制定法の効力は自然に消滅しうるか

慣習法の制定法改廃力の問題(立法者が改廃を怠っている)

2.慣習法

・制定法と慣習法

譲渡担保や内縁は判例によってその法的な効力が認められたものだが、法の解釈につながる問題〔譲渡担保は質権の目的物である動産を、債務者が占有することの禁止に違反(民法345条)、内縁は婚姻の届出によって効力を生ずるとする規定に違反(民法739条)〕

・商慣習法と事実たる慣習

商慣習法は民法に優先して適用

強行法規・・・公の秩序に関する規定は、契約でそれと異なる定めをしても効力はない

任意法規・・・公の秩序に関しない規定は、その定めが有効となる

物権や家族に関する規定・・・強行規定(第三者に影響が及んだりする)

債権に関する規定・・・任意法規(当事者だけの問題)・・・特約できる

ふつう事実たる慣習・・・特約しなくてもその慣習による

3.判例(裁判例)

・判例の拘束力

同一の事件については、上級審の判決が下級審を拘束する

判例は事実上の法源として強い拘束力を持っている

最高裁判所が自己の判例を変更するには、15人の裁判官全員で構成する大法廷で判断をしなければならない

古い判例より新しい判例、1回だけより反復された判例が拘束力を持つ

・判決理由と傍論

判決理由・・・その事件についての実質的結論を引き出すために、決定的な理由になっている部分を判決理由といい、それ以外の部分を傍論という

将来に向かって先例としての拘束力を持つべきものは、判決理由だけ

・判例の変更

例(1)尊属殺の事件・・・尊属殺人罪については、死刑または無期懲役という一般より重い法定制が定められていたが、これが憲法の法の下の平等に反するかどうかが問題となった。最高裁は、初め憲法違反ではないとしたが、のちに変更して憲法違反とした。

例(2)公務員の争議行為・・・国家公務員法は公務員の争議行為を禁止し、これをあおる等の行為に刑事罰を科しているが、憲法28条の労働基本権の保障に反しないように、争議行為及びあおり行為を違法性の強いものに限定するという、合憲限定解釈が一時とられていた。

しかし、のちに変更され、違法性の強弱を問わずに争議行為及びあおり行為を罰するのは、違憲でないとされた。

4.学説

・学説の影響力・・・学説は法源とは言えない

・学説の態様・・・通説・有力説・多数説・少数説

5.条理

・法の完結性と法の欠缺 立法者はすべての事件を予想して法を作った訳ではない。

つまり法に完結性は無く、欠缺(すきま)がある。

刑事事件・・・法規のない場合は、すべて無罪

民事事件・・・適用法規なくても、原告か被告のどちらかを勝たせなければならない

・条理の意味・・・適用すべき法がない場合の裁判のよるべき基準

明治8年太政官布告第103号裁判事務心得3条

「民事ノ裁判ニ成文ノ法律ナキモノハ習慣ニ依リ、習慣ナキモノハ条理ヲ推考シテ裁判スヘシ」という規定に由来し、事物自然の道理の意味

・条理は法か・・・法ではないが、それを補うものと思われ

法の解釈

1.事実認定と法の解釈

・三段論法による法の適用・・・AはBなり、CはAなり、ゆえにCはBなり

大前提(適用法規)、小前提(事実認定)⇒ 結論

ex「故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護された利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(民法709条)

「被告の過失によって原告の病状が悪化したという事実の確定」

「被告は原告に何万円を支払え」・・・結論

第1に事実認定、第2に適用法規とその意味を明らかに・・・裁判官の仕事

・事実認定と裁判官

過失があったかどうかは事実認定の問題

民法709条の過失というのは、単に不注意という常識的な事実概念ではなくて、不法行為としての損害賠償をさせるに値するだけの不注意があったかどうかという、法的評価を含む法的概念である。

不注意には軽いものから重いものまであり、どこかで線を引くことになり、法的解決は白か黒かの二者択一である。裁判官は証拠の取捨選択をし、その事件の解決に必要な事実を認定して行く。

・適用法規と裁判官

不法行為の規定(民法709条)、債務不履行の規定(民法415条、商法590条)

(過失責任の原則)過失がなくても損害賠償責任を負わせるべきだという無過失責任論・・・いわゆる条理  過失とは、権利侵害とは、第1の適用法規の決定、第2のその法規の解釈

・裁判官の判断とその理論構成

判断の過程①具体的な事実関係から妥当な結論を考える。

②その結論を、法規からの理由づけによって正当化しようとする。

法の解釈から、無理なら最善でなくとも次善の結論を求める。

③判決文には、あたかも法規から自動的ないしは必然的にその結論が導き出されたかのように、三段論法的な構成で記述する。

2.法の解釈の性質

・概念法学と自由法学

法規からの演繹か、裁判官の法創造的作用か

・法と裁判官

結論がすべて法規から演繹されるという幻想を捨て、その結論が妥当だという実質的理由を明らかにすべき

・複数の解釈の可能性

原告と被告とは法の解釈で対立することが多い。裁判官は第三者の立場から妥当と思われる解釈により結論

・解釈を指導するもの

立法者意思説・・・国会や審議会の議事録はしばしば引用される

法律意思説・・・法規は立法者の手を離れれば客観的な存在

歴史的解釈と目的論的解釈…法的安定性と具体的妥当性との調和

3.法の解釈の方法

・解釈の技術・・・社会的事実をどう処理するか

・文理解釈と論理解釈・・・文理解釈をしたのちに論理解釈をする

・拡張解釈と縮小解釈  類推解釈と反対解釈・・・実質的な判断で

・擬制・・・知りながら黙っていたという事実から承諾があったものと擬制して

4.法解釈学と法社会学

・法解釈学は科学か

・法社会学の対象と方法

・法学の他の分野・・・法哲学  法とは何かという法の概念

法とはどういうものであるべきかという法の理念

法学の対象・方法についての法学方法論