国民審査~厚木基地訴訟での小池・大谷・木澤裁判官

国民審査~厚木基地訴訟での小池・大谷・木澤裁判官

この記事の所要時間: 747

第4次厚木基地訴訟

国民審査対象裁判官が、意見を述べた判決で、社会的に話題となったものを取り上げます。(小法廷での意見付与は少ないですが…。大法廷については下↓の記事をご覧下さい。)今回は、第一小法廷での厚木基地訴訟です。

時事問題~国民審査対象裁判官の大法廷での意見
第24回最高裁判所裁判官国民審査 平成29年10月22日執行 国民審査対象裁判官の大法廷での意見をまとめました。 対象裁判官7名 ...

最高裁判決を伝えるニュース記事
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08H95_Y6A201C1CC1000/
http://www.asahi.com/articles/ASJD55JXZJD5UTIL02P.html

報道も多く、「逆転不当判決」とハタ出しする弁護士が映し出された。

当時の第一小法廷の裁判官

裁判長裁判官 小池裕
裁判官 櫻井龍子 池上政幸 大谷直人 木澤克之)

※太字は今回の国民審査対象裁判官

最小判平成28年12月8日 運航差止訴訟

民集70巻8号1833頁

厚木基地の周辺住民が、自衛隊機の発する騒音により精神的及び身体的被害を受けているとして運航差止めを求めた訴訟

論点

差止めの要件に当たるか

①行政事件訴訟法37条の4第1項:「重大な損害を生ずるおそれ」
②行政事件訴訟法37条の4第5項:行政庁がその処分をすることが「その裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められる」

法廷意見(反対意見無し)

①自衛隊が設置し,海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場の周辺住民が,当該飛行場における航空機の運航による騒音被害を理由として自衛隊の使用する航空機の運航の差止めを求める訴えについて,行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認めらる

①の裁判要旨
自衛隊が設置し,海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場の周辺に居住する住民が,当該飛行場における航空機の運航による騒音被害を理由として,自衛隊の使用する航空機の毎日午後8時から午前8時までの間の運航等の差止めを求める訴えについて,①上記住民は,当該飛行場周辺の「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」4条所定の第一種区域内に居住し,当該飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により,睡眠妨害,聴取妨害及び精神的作業の妨害や不快感等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており,その程度は軽視し難いこと,②このような被害の発生に自衛隊の使用する航空機の運航が一定程度寄与していること,③上記騒音は,当該飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり,上記被害もそれに応じてその都度発生し,これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであることなど判示の事情の下においては,当該飛行場における自衛隊の使用する航空機の運航の内容,性質を勘案しても,行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。

②厚木飛行場(厚木基地)における自衛隊の使用する航空機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が,行政事件訴訟法37条の4第5項所定の行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるとはいえない

②の裁判要旨
自衛隊が設置し,海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場における,自衛隊の使用する航空機の毎日午後8時から午前8時までの間の運航等に係る防衛大臣の権限の行使は,①上記運航等が我が国の平和と安全,国民の生命,身体,財産等の保護の観点から極めて重要な役割を果たしており,高度の公共性,公益性があること,②当該飛行場周辺の「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」4条所定の第一種区域内に居住する住民は,当該飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により,睡眠妨害,聴取妨害及び精神的作業の妨害や不快感等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており,このような被害は軽視することができないものの,これを軽減するため,自衛隊の使用する航空機の運航については一定の自主規制が行われるとともに,住宅防音工事等に対する助成,移転補償,買入れ等に係る措置等の周辺対策事業が実施されるなど相応の対策措置が講じられていることなど判示の事情の下においては,行政事件訴訟法37条の4第5項所定の行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるとはいえない。

補足意見付与裁判官:小池裕

<大谷・木澤裁判官は個別意見なし>

小池裁判官の補足意見

①について、

「原告らは,……騒音により軽視し難い程度の睡眠妨害や精神的苦痛を反復継続して受けている状況にあるといえる。上記騒音による被害の発生には自衛隊機の運航が寄与しており,自衛隊機の離着陸が行われるたびに騒音が発生するものであるところ,自衛隊機の離着陸に係る運航を行政処分(防衛大臣の権限行使)と捉えると,自衛隊機の離着陸に伴い処分が完結するため,事後的に処分の違法を争い取消訴訟等によって上記状況を解消する救済を得る余地は認め難い。このような上記騒音による被害の程度,自衛隊機の運航の特質等に照らすと,上記差止めの訴えについては,同項に定める『重大な損害を生ずるおそれ』があるといえ,訴訟要件を充足するというべきである。」

②について、

「自衛隊の任務を担う防衛大臣は,自衛隊機の運航に係る権限を行使するに当たって」、国の平和と安全=「国民にとってかけがえのない利益」を守るため,「我が国の平和と安全,国民の生命,身体,財産等の保護に関わる内外の情勢等に応じて,我が国周辺海域における哨戒活動,災害派遣等の民生協力活動,教育訓練等を行うことが求められる。もとより防衛等に関わる活動は,直接侵略及び間接侵略等に緊急的に対峙するだけでなく,自衛隊の任務を果たすため,常にその活動の水準を維持し,整備された体制に伴う効果を保つなどして,内外の情勢等に臨機応変に対処することが必要となるものである。そのため,自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使は,内外の情勢,自衛隊機の運航の目的及び必要性等に関する諸般の事情を総合考慮してなされるべき高度の政策的,専門技術的な判断を要するといえ,あらかじめ一定の必要性,緊急性等に関する事由によって判断の範囲等を客観的に限定することが困難な性質を有し,防衛大臣の広範な裁量に委ねられている

最小判平成28年12月8日 騒音国賠訴訟

集民254号35頁

上記訴訟(差止訴訟)の国家賠償訴訟

論点

原審(東京高判平成27年7月30日)は将来分の損害賠償請求を認めた。

これを不服として国側が上告(=将来の給付訴える権利は無いという主張)。

(過去分の損害賠償請求については原審で確定)

法廷意見(反対意見無し)

国側の勝ち

「飛行場等において離着陸する航空機の発する騒音等により周辺住民らが精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分については,将来それが具体的に成立したとされる時点の事実関係に基づきその成立の有無及び内容を判断すべきあり,かつ,その成立要件の具備については請求者においてその立証の責任を負うべき性質のものであって,このような請求権が将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しない」

補足意見付与裁判官:小池裕

<大谷・木澤裁判官は個別意見なし>

小池裁判官の補足意見

原審が認めた平成28年12月31日まで(岩国基地(山口県)に移転する計画による)に生ずべき損害について

原審は、「約1年8箇月に限った将来請求において考慮すべき事情変動は,……将来請求が当然に認められると解される不動産の不法占有者に対し明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を求める場合と比較してみれば,両者を区別する実質的な相違はないといえるなどとして,その損害賠償金の支払請求を認容」したが、

厚木基地は、「その時々の予測し難い内外の情勢あるいは航空機の配備態勢等に応じて常に変動する可能性を有するものであり,過去の事情によって,将来にわたって一定の航空交通量があることを確定できるものではないことを否定できず,施設使用の目的や態様が公共的な要請に対応して変化する可能性を内包するものというべきである。そのため,たとえ一定の期間を区切ったとしても過去の事情に基づき上記航空機の騒音等に係る損害賠償請求権の将来分の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することは困難であるといわざるを得ず,不動産の不法占有者に対する明渡完了までの賃料相当額の損害金の支払請求と事情を同じくすると考えることはできない」

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