試験前暗記用レジュメ~刑法~背任

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刑法暗記用レジュメ~背任

● 背任罪(247条)

背任罪の本質――権限濫用説と背信説の争い

(1)権限濫用説

背任の罪を、法的な代理権を濫用して財産を侵害する犯罪であると考える。

(2)背信説 【通説・判例】

背任の罪を誠実義務に違反する財産の侵害を内容とする犯罪であると考える。この立場では、事実行為による背任も認められる。

 要件

背任罪とは、

他人のために、その事務を処理する者が、

自己もしくは第三者の利益を図り、又は②本人に損害を加える目的で、

その任務に背いた行為をし、

本人に財産上の損害を加えた場合の犯罪。

なお、会社法には「特別背任罪」の規定がある。

Ⅰ: 主体

他人のためその事務を処理する者である(身分犯)。

他人のためにその事務を処理する」とは、他人の事務をその他人のために処理すること。

<他人のため>

行為者と他人つまり本人との間に、法律上の信任関係があることを要するが、これは、契約のみならず、慣習、事務管理に基づくものでもよい。

<事務>

この事務とは、財産上の事務を処理する場合に限らないとするのが通説。

Ⅱ: 目的

背任罪は目的犯であり、次の、いずれかの目的があれば足りる(択一的)。

①利得の目的、すなわち自己(犯人)もしくは第三者の利益を図る目的

②加害の目的、すなわち本人(銀行や会社など)に損害を加える目的

この二つの目的を合わせて図利加害目的(とりかがいもくてき)という。

判例は図利や加害を積極的に望まなくても、図利・加害の結果になることを認識していれば、これらの目的はあったものとしている。すなわち、判例は、「意欲ないし積極的認容までは要しない」としている(最決昭63・11・21)。

Ⅲ: 任務に背いた行為

本人との間の信任関係を破る行為、すなわち本人の事務を処理する者として当然なすべき法的に期待された行為をしないこと

たこ配当、粉飾決算、不良貸付などが典型事例。

Ⅳ: 本人に財産上の損害を加えること

財産上の損害とは、広く財産上の価値を減少することであり、

既存の利益を減少せしめること、及び、将来得べかりし利益を喪失減少せしめること、

をいう(全体財産に対する罪)。

したがって、損害の発生は、経済的見地から判断される(経済的損害概念)。

なお、従来の判例は、現実の損害が未だ生じていない場合であっても、「実害発生の危険」という表現を用いて損害の発生を認めていた。例えば、抵当権の順位の後退、つまり一番抵当権が二番抵当権に後退したときなど。

この判例の用いていた「実害発生の危険」という表現は、背任罪を危険犯だと誤解される恐れがあることからその後最高裁は表現を変え、「経済的見地において、本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって、本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったとき」に財産上の損害があったものとするようになった。

既遂時期

背任罪の既遂とは、背任行為によって本人に財産上の損害が生じた時点である。

無担保での融資の場合には、すでに貸し付け実行時のときが既遂となる。

故意の認定

背任罪の故意とは、つぎの二つの認識・認容があることである。

①自己の行為がその任務に違背するものであること、②それによって、本人に財産上の損害を加えること、の認識・認容である。

このいずれの認識も、未必的認識で足りる。

<構成要件の段階で故意の認定は可能>

● 横領と背任の区別

学説による区別

横領罪は権限逸脱であるのに対し、背任罪は権限濫用だとする。

つまり行為態様で区別する。

権限濫用は一応権限内の行為であるから、不法領得意思の発現である横領とは評価できない。

ただし、一般的には権限内の行為ではあるが、委託の趣旨から絶対に許されない行為であれば横領とみなされる。なぜなら、それは実質的には逸脱行為であり、本人でなければできない勝手な処分だからである。

判例の区別基準

判例は、他人のための事務処理者が、他人の物を不法に処分した場合に、

本人の利益を図る目的であれば犯罪は成立であるが、

そうでない場合は、

本人の名義・計算で行われた行為であれば背任

自己の名義・計算で行われた行為であれば横領 という区別をしている。

ただし、判例は、この、誰の名義かという判断を必ずしも形式的にするわけではない。

例えば、某森林組合の組合長が、造林資金として組合員へ貸し付ける目的の政府貸付金を、資金難の町役場に貸し付けた事案は、組合名義つまり本人名義で貸し付けたにもかかわらず横領罪の成立を認めた最高裁判例がある(最判昭34・2・13)。

裁判所の判断は、たとえ組合名義であっても、一切流用を許されない資金を勝手に第三
者に貸し出す行為は、何ら正当な権限に基づかず、ほしいままに被告人ら個人の計算にお
いて行ったもので、不法領得の意思ありと評価したのである。つまり、形式的には本人名
義を用いていても、実質は本人の計算で行われたものとはいえない場合は、自己の計算で
行ったとみなされてしまうのである。


学説も判例も結論としては同じことをいっているのであって、結局、権利者でなければ
できない勝手な処分をしたといえば横領、それにあたらなけば背任にとどまるということ。

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