問題解答~株式会社における所有・経営・支配の関係

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解答~株式会社における所有・経営・支配の関係

問題

株式会社における所有・経営・支配の関係について述べよ。

株式会社の所有者は株主である。また、株式会社の支配者は、「所有に基づく支配」という理念から、所有者たる株主である。しかし、株主が会社財産を物的に支配しているわけではない。配当請求権や残余財産分配権、議決権、書類閲覧権などの株式に内在された権利によって、いわば間接的に支配しているのである。そのために、株式の種類や株式所有の分布状況によって支配の実態は変化する。
そもそも、企業は成長するために、より多くの資金を必要とする。ゆえに、株式会社は資金調達の手段として株式を発行する。その資金によって企業は規模を拡大していくが、大規模になればなるほど、さらなる資金需要が生じる。そこで、より多くの投資家から資金を調達しようと、株式市場に上場すれば、投資家の数は増え、「株式所有の分散」が起こる。
「株式所有の分散」が高度化するほど、ひとりひとりの株式所有率は低くなる。さらに、株式所有率の低下は、経営へ参加する割合も低下させることになる。すると、所有者たる株主が「所有経営者」として企業を経営することは困難となり、株主ではない「専門経営者」に企業の経営が委託されるようになる。
この所有と経営の分離の現象は、アドルフ・バーリとガーディナー・ミーンズによって研究された。彼らによれば、企業の支配形態は、株式所有の分散化につれ、「完全所有支配」から「過半数支配」「少数所有支配」を経て、やがて有力な所有者による支配が全く見られない「経営者支配」が成立する。「経営者支配」の状態では、上述の通り、所有を基礎としない「専門経営者」の支配権によって経営が行われる。ここでは、所有と経営が完全に分離した形となる。
ところで、バーリやミーンズの研究対象はアメリカ企業であったが、奥村宏は、日本企業において、彼らがいうような株式所有の高度分散化による経営者支配論は成立しないと述べた。その理由としては、日本では株式所有が法人や機関投資家に集中していることが挙げられた。
高度成長期の日本は、三井グループや三菱グループと言った、銀行を中核とした株式の相互持ち合いが行われ、経営のチェックが怠慢になっていた。こうした背景には、財閥解体後も、企業集団の再編成や大企業を頂点とする縦の系列化が行われる過程で、企業間結合を強めようと、株式の相互保有が行われたことがある。さらに、資本自由化に伴う海外資本の対抗策であった安定株主工作として、株式の相互保有が浸透した。そうして、日本では、大企業の大株主がほとんど法人である「法人資本主義」が生まれた。相互支配・相互信任に基づいた、法人を代表する経営者による支配が成り立っているのである。

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