2017年司法試験民事系論文式問題(資料含め全文)

2017年司法試験民事系論文式問題(資料含め全文)

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平成29年司法試験民事系論文

論文式試験問題集[民事系科目第1問]

[民事系科目]〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は,30:40:30〕)

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕に答えなさい。

【事実】

1.甲土地と乙土地は,平成14年3月31日以前は長い間いずれも更地であり,全く利用されていなかった。Aが所有する乙土地は,南側が公道に面するほかはBが所有する甲土地に囲まれた長方形の土地であるが,乙土地の実際の面積は登記簿に記載されている地積よりも小さかった。また,甲土地と乙土地の境界にはもともと排水溝があった。

2.平成14年4月1日,Aは,排水溝が埋没したのを奇貨として,登記簿記載の地積にほぼ合致するように,乙土地の東側と西側をそれぞれ5メートルほど広げる形で,柵を立てた(公道に面する南側部分を除く。以下では,この柵と南側の公道に囲まれた土地全体を「本件土地」といい,乙土地の東側に隣接する甲土地の一部を「甲1部分」と,西側に隣接する甲土地の一部を「甲2部分」という。なお,本件土地の位置関係は別紙図面のとおりであり,〔本件土地=乙土地+甲1部分+甲2部分〕という関係にある。本件土地の東側・北側・西側の外周に,それぞれ柵が立てられている状態である。)。Aは,柵を立てた後も,本件土地を更地のままにしていた。

3.医師であるCは,診療所を営むことを考えており,それに適する場所を探していたところ,知人からAを紹介され,本件土地に診療所用の建物を建築することを計画した。そこで,Cは,乙土地の登記簿を閲覧した上で,Aと共に本件土地を実地に調査し,本件土地の東側・北側・西側の外周に柵があることを確認した。また,Cは,本件土地の測量を行い,その面積が乙土地の登記簿に記載されている地積とほぼ合致することを確認した。

4.AとCは,平成16年9月15日,本件土地につき,Aを賃貸人,Cを賃借人,契約期間を同年10月1日から30年間,賃料を月額20万円,使用目的を診療所用の建物の所有とする賃貸借契約(以下「本件土地賃貸借契約」という。)を締結した。

5.平成16年9月25日,Cは,建築業者との間で,本件土地に診療所用の建物を建築することを目的とする請負契約を締結した(以下では,この請負契約に基づき行われる工事を「本件工事」という。)。

6.平成16年10月1日,Aは,本件土地賃貸借契約に基づき,本件土地をCに引き渡した。Cは,約定どおり,Aが指定する銀行口座に同月分以降の賃料を振り込んでいた。

7.本件工事の開始は請負人である建築業者の都合で大幅に遅れた。その間,【事実】2の柵は立てられたままであったが,本件土地は全く利用されておらず,更地のままであった。

8.平成17年6月1日になってようやく本件工事が始まった。本件工事は,乙土地と甲1部分の上で行われ,Cは,同日以降,甲2部分を工事関係者に駐車場や資材置場として利用させていた。

9.本件工事は平成18年2月15日に終了し,同日,乙土地と甲1部分の上に建築された建物(以下「丙建物」という。)につきC名義で所有権保存登記がされた。丙建物は,乙土地と甲1部分のほぼ全面を利用する形で建築された。Cは,同年4月1日に診療所を開設した。甲2部分は,それ以降,患者用駐車場(普通自動車3台分)として利用されている。

10.Bは,長い間甲土地を利用しないまま放置していたが,平成26年8月になって甲土地に建物を建築することを計画した。Bは,その際,丙建物が甲1部分に越境して建築されていること及びCが駐車場として利用している甲2部分も甲土地の一部であることに気付いた。

11.そこで,平成27年4月20日,Bは,Cに対し,所有権に基づき,甲1部分を明け渡すことを求める訴えを提起した。

〔設問1〕【事実】1から11までを前提として,次の問いに答えなさい。Cは,Bが甲1部分を所有することを認めた上でBの請求の棄却を求める場合,どのような反論をすることが考えられるか,その根拠及びその反論が認められるために必要な要件を説明した上で,その反論が認められるかどうかを検討しなさい。なお,丙建物の収去の可否及び要否について考慮する必要はない。

Ⅱ【事実】1から11までに加え,以下の【事実】12から16までの経緯があった。

【事実】

12.平成27年11月10日,Aは,Bから,甲1部分及び甲2部分を買い受けた。同日,甲土地を甲1部分,甲2部分及びその余の部分に分筆する旨の登記がされ(以下では,甲1部分を「甲1土地」,甲2部分を「甲2土地」といい,乙土地,甲1土地及び甲2土地を「本件土地」という。),甲1土地と甲2土地のそれぞれにつきBからAへの所有権移転登記がされた。Bは,これを受けて,【事実】11の訴えを取り下げた。Aは,Cに対し,これらの事実を伝えるとともに,本件土地賃貸借契約については従来と何も変わらない旨を述べた。また,同月20日に,丙建物につき,その所在する土地の地番を,「乙土地の地番」から「乙土地の地番及び甲1土地の地番」に更正する旨の登記がされた。

13.平成28年1月に,Cは,友人Dから,勤務医を辞めて開業したいと考えているが,良い物件を知らないかと相談を受けた。Cは,健康上の理由で廃業を考えていたところであったため,Dに対し,丙建物を貸すので,そこで診療所を営むことにしてはどうか,と提案した。Dは,この提案を受け入れることにした。

14.CとDは,平成28年5月1日,丙建物について,賃貸人をC,賃借人をD,契約期間を同日から5年間,賃料を月額60万円,使用目的を診療所の経営とする賃貸借契約(以下「丙賃貸借契約」という。)を締結した。その際,CとDは,専らCの診療所の患者用駐車場として利用されてきた甲2土地について,以後は専らDの診療所の患者用駐車場として利用することを確認した。

15.平成28年5月1日以降,Dは,丙建物で診療所を営んでいる。丙建物の出入りは専ら甲1土地上にある出入口で行われ,甲2土地は,従前と同様,診療所の患者用駐車場として利用されており,3台の駐車スペースのうち1台は救急患者専用のものとして利用されている。

16.平成28年9月3日,Aは,CD間で丙賃貸借契約が締結されたこと,Dが丙建物で診療所を営み,甲2土地を診療所の患者用駐車場として使っていることを知った。同月5日に,Aは,Cに対し,事前に了解を得ることなく,①Cが丙建物をDに賃貸し,そこでDに診療所を営ませていること,②Cが甲2土地を診療所の患者用駐車場としてDに使用させていることについて抗議をした。

〔設問2〕【事実】1から16までを前提として,次の問いに答えなさい。Aは,本件土地賃貸借契約を解除することができるか,【事実】16の下線を付した①及び②の事実がそれぞれ法律上の意義を有するかどうかを検討した上で,理由を付して解答しなさい。

Ⅲ【事実】1から16までに加え,以下の【事実】17から20までの経緯があった。

【事実】

17.その後,Aは,Cだけでなく,Dにも連日苦情を述べるようになった。Dから対処を求められたCは,平成28年9月20日,Aに対し,50万円を支払うので今回の件をこれ以上問題にしないでほしいと申し入れた。Aは,不満ではあったものの,金策に追われていたことから,Cの申入れを受け入れることにし,AとCとの間で和解が成立した。同月25日に,Cは,Aに対し,前記和解に基づき,50万円を支払った。Dは,Cから,Aとの間で和解が成立した旨の報告を受け,引き続き診療所を営んでいる。

18.平成28年12月10日,Aは,資金繰りの必要から,Eとの間で,本件土地(甲1土地,甲2土地及び乙土地)を6000万円でEに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。その際,Aは,Eに対し,Cの契約違反を理由に本件土地賃貸借契約は解除されており,Cは速やかに丙建物を収去して本件土地を明け渡すことになっている旨の虚偽の説明をした。Eがこの説明を信じたため,前記代金額は,それを前提として決定され,建物の収去及び土地の明渡しが未了であることを考慮し,本件土地の更地価格(7000万円)より1000万円低く設定された。

19.平成28年12月16日,Eは,Aに対し,本件売買契約に基づき,その代金として6000万円を支払った。また,同日,本件土地の3筆それぞれにつき,本件売買契約を原因として,AからEへの所有権移転登記がされた。

20.平成29年2月20日,Eは,Cに対し,本件土地の所有権に基づき,丙建物を収去して本件土地を明け渡すことを求める訴えを提起した。

〔設問3〕【事実】1から20までを前提として,次の問いに答えなさい。Cは,Eの請求に対しどのような反論をすることが考えられるか,その根拠を説明した上で,その反論が認められるかどうかを検討しなさい。

論文式試験問題集[民事系科目第2問]

[民事系科目]〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,35:40:25〕)

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。

1.A及びBは,Cから,加工食品の製造業及び卸売業を営む甲株式会社(以下「甲社」という。)を設立するので,協力してほしいと頼まれた。そこで,甲社の設立に際し,Aは,唯一の発起人となるとともに,甲社の設立に際して発行される株式の一部を引き受け,出資の履行として1200万円を払い込み,Bは,発起人とならなかったが,残りの株式を引き受け,出資の履行として1800万円を払い込んだ。

2.Aは,甲社の設立手続を進める上で,当初の1か月間は,設立事務を行う事務所と設立事務を補助する事務員が必要であると考えた。そこで,Aは,Dから,平成23年5月9日,「甲社発起人A」の名義で,事務所用建物を,賃貸期間を1か月に限り,賃料を後払いで60万円とする約定により賃借した。また,Aは,同月12日,「甲社発起人A」の名義で,Eを,設立事務を補助する事務員として,期間を1か月に限り,報酬を後払いで40万円とする約定により雇用した。なお,当該賃料及び当該報酬は,相場に照らし,いずれも適正な金額であった。

3.Aは,Fとの間で,平成23年5月13日,「甲社発起人A」の名義で,成立後の甲社の事業に用いる目的で,食品加工用の機械(以下「本件機械」という。)を,甲社の成立を条件として,本件機械の引渡し及び代金の支払の期日をいずれも同年7月29日とし,代金を800万円とする約定により,甲社がFから購入する契約(以下「本件購入契約」という。)を締結した。

4.平成23年6月14日,甲社の設立登記がされた。公証人の認証を受けた甲社の定款には,設立費用については「設立費用は80万円以内とする。」との記載のみがあり,また,甲社の成立を条件として特定の財産を譲り受けることを約する契約については記載がなかった。なお,当該設立費用については,裁判所の選任した検査役の調査等の必要な手続を経ていた。甲社は取締役会設置会社かつ監査役設置会社であり,甲社の代表取締役はCである。甲社の設立時の株主は,A及びBの二人のみであり,甲社の発行済株式及び総株主の議決権のいずれも,40%はAが,60%はBが,それぞれ保有している。甲社の純資産額は,設立後,数か月の間,3000万円を超えることがなかった。

5.甲社は,Fから,平成23年6月16日,本件機械について代金として50万円を追加するように要求されるとともに,この要求に応じないのであれば,本件購入契約の有効性を問題とし,本件機械の引渡しに応じないと主張された。

〔設問1〕
⑴ Aは,Dに対して上記2の賃料60万円を,Eに対して上記2の報酬40万円を,いずれも支払っておらず,甲社は,その成立後,直ちに,D及びEから,これらの支払を求められた。この場合において,甲社がこれらの支払を拒否することができるかどうかについて,判例の立場及びその当否を検討した上で,論じなさい。
⑵ 甲社の代表取締役Cは,本件機械が甲社の事業活動に不可欠であったことから,上記5のFの要求に応ずることもやむを得ないが,できれば代金を追加して支払うことなく本件機械の引渡しを受けたいと考え,平成23年6月20日頃,その旨を弁護士に相談した。当該弁護士の立場に立って,本件購入契約に関する会社法上の問題点について論じた上で,それを踏まえつつ,甲社が本件機械の引渡しを受けるために採ることができる方法及びこれに必要となる会社法上の手続について,検討しなさい。

6.平成27年12月,甲社の取締役会は,甲社と取引関係があった加工食品の小売販売業を営む乙株式会社(以下「乙社」という。)が経営不振に陥り,乙社から援助を求められたことを受け,乙社の全ての発行済株式を取得して,乙社を完全子会社化した上で,乙社の経営を立て直すことを決定した。乙社を完全子会社化するのは,甲社の経営方針に反対する少数株主を排除するためであった。乙社は,会社法上の公開会社であるが,金融商品取引所にその発行する株式を上場していない。乙社は,種類株式発行会社ではなく,その定款には,その発行する株式について株券を発行する定めや単元株式数に関する定めはない。なお,乙社の定款のうち,本問に関係する定めは,別紙の1のとおりである。

7.甲社は,乙社の株式を買い集め,乙社の発行済株式の60%に当たる6000株を取得した。乙社の取締役はいずれも乙社が甲社の完全子会社となることに賛成していたが,乙社の創業者の一族である株主Gは,乙社が甲社の完全子会社となることに強硬に反対し,甲社からの株式売却の勧誘にも一切応じない姿勢を見せていた。

8.乙社は従業員持株制度を採用しており,乙社の従業員のうち希望者が従業員持株会に加入している。当該従業員持株会(以下「本件持株会」という。)は,平成28年3月31日の時点で,乙社の従業員20人から成る民法上の組合であり,乙社の株式を1200株取得しており,当該1200株については下記9のとおり株主名簿に株主として本件持株会の理事長であるHが記載されている。本件持株会の会員は,積立口数に応じて本件持株会が保有する乙社の株式について持分を有し,各自の持分に相当する株式を管理の目的をもって理事長に信託している。すなわち,当該1200株については,実質的には,本件持株会の会員である従業員20人が,その持分に応じて,保有していることとなる。本件持株会の規約のうち本問に関係する定めは別紙の2のとおりである。なお,本件持株会の規約の内容は適法であり,当該規約に基づく株式の信託を無効とする事由はない。

9.平成28年3月31日の最終の株主名簿に記載された乙社の株主及びその持株数は,次のとおりであった。甲社:6000株,G:2000株,乙社従業員持株会(本件持株会)理事長H:1200株,I:800株

10.甲社と乙社の取締役が話し合った結果,乙社を甲社の完全子会社とするため,乙社は,株式の併合をすることとなった。乙社の代表取締役Jは,取締役会の決議に基づき,平成28年6月1日に定時株主総会の招集通知を発した。当該招集通知には,株主総会の目的の一つが株式の併合であること,株式の併合に係る議案の概要として,①3000株を1株に併合すること,②株式の併合がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)を同年7月11日とすること,③効力発生日における発行可能株式総数を効力発生日における発行済株式の総数の4倍に当たる数とすること等が記載されていた。他方で,株主総会に出席しない株主が書面又は電磁的方法によって議決権を行使することができることとする旨は記載されていなかった。乙社は,当該招集通知を発した日に,上記①から③までの事項を公告するとともに,上記①から③までの事項を含む株式の併合に関する所定の事項を記載した書面を本店に備え置いた。

11.上記10の招集通知に基づき平成28年6月20日に開催された乙社の定時株主総会(以下「本件株主総会」という。)には,Gのほか,甲社の代表取締役Cが甲社を代表して出席し,また,本件持株会の発足以来その会員であるKが本件持株会理事長Hの代理人として出席した。Kは,その際,本件株主総会において議決権行使の代理人をKとする旨のHが作成した委任状を乙社に提出した。なお,本件持株会の会員でHに対し本件株主総会における議決権行使についての特別の指示をしたものはいなかった。

12.Iは平成27年10月1日に死亡し,Iの唯一の相続人であるLが,Iが保有していた乙社株式800株(以下「本件株式」という。)を相続した。Lは,Iの生前から,乙社の株主名簿上のIの住所においてIと同居しており,Iが死亡した後も,引き続き同所において居住している。Lは,Iの生前から,Iが本件株式を保有していたことを知っていたものの,本件株式を相続により取得した後も,本件株式について株主名簿の名義書換えを請求していなかったが,I宛ての本件株主総会の招集通知を受け取った日の翌日である平成28年6月3日,乙社に対し,相続により本件株式を取得したことを証する書面を提示して株主名簿の名義書換えを請求するとともに,上記10の株式の併合に反対する旨を乙社に通知した。乙社は,同日,Lの請求のとおり株主名簿の名義書換えを行った。本件株主総会の当日,Lは,本件株主総会の会場に現れ,入場を求めたが,乙社の受付担当者は,乙社の代表取締役Jの指示に基づき,Lが本件株主総会に係る議決権行使の基準日において株主名簿上の株主でなかったことを理由として,Lの入場を認めなかった。

13.本件株主総会において,乙社の代表取締役Jは,株式の併合をすることを必要とする理由として,①株主への通知や配当金の支払に掛かるコストを削減するために株主の人数を減少させる必要があること,②乙社は,数年後に,会社の事業規模に合わせて資本金の額を減少する予定であり,そのためには,会社法上,発行済株式の総数を減少させる必要があることの2点を説明したが,乙社を甲社の完全子会社とした上で甲社の支援により乙社の経営を立て直すという本来の目的については説明しなかった。

14.本件株主総会において,上記10の株式の併合の議案については,Gが反対したが,甲社及びHの代理人であるKが賛成したことにより,可決された(以下「本件決議」という。)。

〔設問2〕Gは,本件決議の瑕疵を主張して,本件決議の効力を否定することを検討している。平成28年7月20日の時点で,本件決議の効力を争うためにGの立場において考えられる主張及びその当否について,論じなさい。
〔設問3〕上記10の株式の併合により乙社の株式を失うこととなるLの経済的利益が会社法上どのように保護されるかについて,論じなさい。ただし,株式の併合をやめることを請求し,株式の併合の効力を否定し,又は損害賠償を請求するという手段については,論じなくてよい。
別紙
1 乙株式会社定款(抜粋)
(なお,以下の定めは,設立時から本件株主総会の終結の時までの間,変更されていない。)(定時株主総会の基準日)
第11条 当会社は,毎年3月31日の最終の株主名簿に記載された議決権を有する株主をもって,その事業年度に関する定時株主総会において議決権を行使することができる株主とする。
(決議)
第15条 株主総会の普通決議は,法令又は定款に別段の定めがある場合のほか,出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって決する。
2 会社法第309条第2項に定める決議は,議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。
(議決権の代理行使)
第16条 株主は,当会社の他の株主1名を代理人として,その議決権を行使することができる。

2 乙株式会社従業員持株会規約(抜粋)

(株式の管理及び名義)
第10条 会員は,各自の持分に相当する株式を管理の目的をもって理事長に信託するものとする。前項により理事長が受託する株式は,株主名簿において理事長名義とする。
(議決権の行使)
第11条 理事長名義の株式の議決権は,理事長が行使するものとする。ただし,会員は,各自の持分に相当する株式の議決権の行使について,理事長に対し,株主総会ごとに特別の指示を与えることができる。

論文式試験問題集[民事系科目第3問]

[民事系科目]〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,15:55:30])

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。

【事例】
Xは,Yに対し,平成28年3月10日,Yから譲り受けた浮世絵版画(以下「本件絵画」という。)の引渡しを求める訴えを管轄地方裁判所に提起した。この訴訟において,訴訟代理人は選任されていない。

Xは,訴状において,次のように主張した。「Xは,かねてよりYの事業の支援をしていたが,平成27年9月1日,Yから,これまでの支援の御礼として,本件絵画の贈与を受けた。Yから受け取った念書には,YがXに本件絵画を譲る旨や同年10月1日にY宅で本件絵画を引き渡す旨が記載されている。その後,Xが約束どおりY宅に出向いて本件絵画の引渡しを求めたのに,Yはこれを拒み,一切の話合いに応じないので,贈与契約に基づく本件絵画の引渡しを求めるため,本件訴えを提起した。贈与の事実の証拠として,この念書を提出する。」

これに対し,Yは,答弁書において,次のように主張した。
「Yは,絵画について造詣が深い友人Aから,Xが本件絵画の購入を望んでいると聞いて,Xに本件絵画を売却したのであり,贈与などしていない。Xに交付した念書には代金額の記載がないが,それは,代金額を本件絵画の時価相当額とする趣旨であり,その額は300万円である。ところが,平成27年10月,Xは,本件絵画の取引はXに対する贈与であり,代金を支払うつもりはないと言ってきたので,Yは,本件絵画の引渡しを拒んだ。これらの事実を立証するため,本件絵画の取引経緯に詳しいAを証人として申請する。」

第1回口頭弁論期日が平成28年5月10日に開かれ,Xは訴状に記載した事項を,Yは答弁書に記載した事項をそれぞれ陳述した。さらに,Xは,贈与の主張に加え,仮にこの取引が売買であり,本件絵画の時価相当額が代金額であるとしても,その額は200万円にすぎないと主張した。

第2回口頭弁論期日では,Aの証人尋問と,X及びYの当事者尋問が行われた。Aは,本件絵画の取引はその時価相当額を代金額とする売買契約であること,その額は200万円であること,この売買契約はAがYの代理人としてXと締結したものであることなどを述べた。期日においては,本件絵画の取引が贈与又は売買のいずれであるか,また,売買であるとしてその代金額は幾らかに焦点が絞られ,AがYの代理人であったか否かについては,両当事者とも問題にしなかった。

以下は,期日終了後の裁判官J1と司法修習生Pとの間の会話である。

J1:今日の証拠調べの結果をどのように評価しますか。率直な意見を聴かせてください。

P:取引経緯に関するAの証言は具体的で信用できるため,Yの代理人AとXとの間で,本件絵画の時価相当額を代金額とする売買契約が成立し,その額は200万円であると考えられます。Xはこの200万円を支払っていませんから,売買を理由に,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決をすべきではないでしょうか。

J1:私の心証も同じですが,あなたの言うような判決を直ちにすることができるのでしょうか。まず,Yの代理人AとXとの間で契約が締結されたとの心証が得られたとして,その事実を本件訴訟の判決の基礎とすることができるのかについて,考えてみてください。

P:両当事者がその点を問題にしなかったのだからいいように思いましたが,考えてみます。

〔設問1〕あなたが司法修習生Pであるとして,J1から与えられた課題に答えなさい。

【事例(続き)】
以下は,J1とPとの間の会話の続きである。

J1:次に,あなたの言うような判決はXの請求に対する裁判所の応答として適当なのか,すなわち,本件の訴訟物は何かを考える必要もありますね。そして,Xは,第1回口頭弁論期日に,「仮にこの取引が売買であり,本件絵画の時価相当額が代金額であるとしても,その額は200万円にすぎない。」と主張していますが,これには,どのような法的な意味合いがありますか。

P:Xが単に譲歩をしただけで,あまり法的に意味のある主張には見えませんが。

J1:本当にそうでしょうか。他方,Yは,「本件絵画をXに時価相当額で売却し,その額は300万円である。」と主張していますが,その法的な意味合いも問題になりますね。

P:はい。Xの主張する請求原因事実との関係で,Yのこの主張がどのように位置付けられるか,整理したいと思います。

J1:本件は,訴訟代理人が選任されていないこともあり,紛争解決のために,両当事者の曖昧な主張を法的に明確にする必要がありそうです。
訴訟物の捉え方については様々な議論がありますが,あなたの捉える本件の訴訟物は何になるかを示した上で,各当事者から少なくともどのような申立てや主張がされれば,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決をすることができるか,考えてみてください。その際,先ほどお願いしたYの主張の位置付けの整理も行ってください。これを課題①とします。
ところで,本件絵画の時価相当額については,当事者からより適切な証拠が提出されれば,別の金額と評価される可能性もあると思います。課題①で必要となる各当事者の申立てや主張がされたという前提の下で,仮に,本件絵画の時価相当額が220万円と評価される場合あるいは180万円と評価される場合には,それぞれどのような判決をすることになるのかについても,考えてみてください。これを課題②とします。
なお,課題①及び②の検討においては,設問1で検討した点に触れる必要はありません。
また,あなたの言うとおり,本件絵画の時価相当額を代金額とする売買契約が成立したものとして,考えてください。

〔設問2〕
⑴あなたが司法修習生Pであるとして,J1から与えられた課題①に答えなさい。
⑵あなたが司法修習生Pであるとして,J1から与えられた課題②に答えなさい。

【事例(続き)】
その後,上記の訴訟(以下「前訴」という。)においては,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決がされ,この判決は確定した。
もっとも,Xは,自らの事業の経営状態が悪化したこともあり,代金を支払ってまで本件絵画を手に入れることに熱意をなくしてしまった。逆に,Yは,Xに対し,本件絵画を持参するので代金200万円を支払ってほしいと連絡したが,Xから拒絶された。そこで,Yは,弁護士に委任して,Xに対し,平成29年3月1日,本件絵画の売買代金200万円の支払を求める訴え(以下「後訴」という。)を管轄地方裁判所に提起した。
Xから委任を受けた弁護士は,前訴で問題となった本件絵画の取引について事情を調べたところ,X及びYの取引仲間であるBから,本件絵画の取引は贈与である旨の証言を得られそうだとの感触を得た。また,同弁護士が本件絵画の写真数点を古物商に見せたところ,高くても150万円相当であるとのことであった。そこで,同弁護士は,改めて事実関係を争うべきであると考え,答弁書において,XY間には本件絵画の贈与契約が成立したのであって,Xは売買代金の支払義務を負わないし,仮に贈与契約でなく売買契約が成立したと判断されたとしても,その代金額は150万円であり,Xはその限度でしか支払義務を負わないと主張した。
第1回口頭弁論期日には,双方の訴訟代理人が出頭し,訴状及び答弁書に記載した事項をそれぞれ陳述した。Yの訴訟代理人は,答弁書におけるXの主張は前訴判決の既判力に触れて許されず,前訴判決に沿って,直ちに請求認容判決がされるべきであると主張した。これに対し,Xの訴訟代理人は,前訴判決において,XY間には代金200万円の本件絵画の売買契約が成立したと判断されたかもしれないが,Xの代金支払義務に関する判断には既判力は生じないと主張した。

以下は,後訴を担当した裁判官J2と司法修習生Qとの間の会話である。

J2:本件は,Yの訴訟代理人の主張するように,前訴判決に沿って,直ちに請求認容判決をすべきなのでしょうか。

Q:今まで考えたことがないのですが,既判力の範囲に関する民事訴訟法の規定に遡って考えないといけないように思います。

J2:そうですね。それを出発点としつつ,前訴判決の主文において引換給付の旨が掲げられていることの趣旨にも触れながら,後訴において,XY間の本件絵画の売買契約の成否及びその代金額に関して改めて審理・判断をすることができるかどうか,考えてみてください。

〔設問3〕
あなたが司法修習生Qであるとして,J2から与えられた課題に答えなさい。

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