民法改正の解説~法定利率に関する見直し

この記事の所要時間: 51

法定利率に関する見直し

2020年の施行が目指されている、改正民法の解説です。

今回は、第548条の2~第548条の4(民法第3編第2章第1節第5款)で新設される、「約款」についてです。

現在の法定利率

条文(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。

民事:年5%(現§404)
※ 制定当時の市中の金利を前提としたもの

商事:年6%(商法§514)
※ 民法の法定利率が年5%であることを前提としたもの
※ 商行為(営業資金の借入れ等)によって生じた債務に適用される。

法定利率の適用場面

① 利息を支払う合意はあるが約定利率の定めがない場合の利息の算定
例) 利息付き消費貸借

② 約定利率の定めがない金銭債務の遅延損害金の算定
例) 交通事故の損害賠償などの遅延損害金

③ 逸失利益などの損害賠償の額を定める際の中間利息控除(判例)
※中間利息控除とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除することをいう。

⇒ 法定利率は、明治期における民法・商法の制定以来、見直しがされていない。

⇒ 昨今では、市中金利を大きく上回る状態が続いている。

問題の所在

・法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続いている。
→ 利息や遅延損害金の額が著しく多額となる一方で、中間利息の控除の場面では不当に賠償額が抑えられるなど、当事者の公平を害する

・法定利率を固定のものとすると、将来、市中金利と大きく乖離する事態が生ずるおそれがある。
→ 合理的な変動の仕組みをあらかじめ法律で定めておき、予測可能性を高めるのが適切。

・市中金利の短期的・微細な変動に連動して法定利率が変わると、社会的コストが非常に大きい。

・現代社会において、商行為によって生じた債務を特別扱いする合理的理由に乏しい。

改正法の内容

法定利率の引下げ【新§404Ⅱ】

・施行時に年3%
緩やかな変動制の導入【新§404Ⅲ~Ⅴ】

・法定利率を市中の金利の変動に合わせて緩やかに上下させる変動制の導入

3年ごとに法定利率を見直し
貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動(法定利率は整数になる。)商事法定利率の廃止【現商法§514の削除】

商行為によって生じた債務についても、民法に規定する法定利率を適用

変動制の具体的な内容

・3年を「1期」として、「1期」ごとに変動

・日本銀行が公表している貸出約定平均金利の過去5年間における短期貸付けの平均金利の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満は切捨て)を「基準割合」とする。
※ 過去5年間=各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月(例えば、平成35年4月1日が期の初日である場合には、平成29年1月~平成33年12月の各月)

・直近変動期の基準割合と当期の基準割合との差(1%未満は切捨て)に相当する割合を、直近変動期における法定利率に加算し、又は減算する。
※ 1つの債権については1つの法定利率(例えば、交通事故の損害賠償の遅延損害金は事故時(初めて遅滞の責任を負った時、利息債権については最初に利息が発生した時)の法定利率が適用され、事後的に変動しない)。

中間利息控除

交通事故などの不法行為等による損害賠償は、将来の逸失利益(将来取得するはずであった利益)を含めて事故時から請求が可能

→「中間利息控除」とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除することこの控除の割合は法定利率(年5%)による(最判平成17年6月14日)

検討の経過

・中間試案では、中間利息控除について現状維持(年5%の固定制)の規定を新設する案
・パブコメでは多くの反対意見
(遅延損害金の算定などに用いられる法定利率を引き下げつつ、中間利息控除に使用する利率のみを現状維持とすると、被害者の請求可能な金額が単純に減少し、関係者間の公平に欠ける。)

改正法の内容

中間利息控除にも法定利率(変動制)を適用【新§722Ⅰ】

※ 事故時(損害賠償請求権が生じた時点)の法定利率を適用することも明確化

改正後の条文

1項を「その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による」と変更。2~5項を新設。

(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

法定利率は、年三パーセントとする。

前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めると
ころにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により
変動するものとする。

各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。

前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

フォローする