行政法学《環境法》レジュメ~土壌汚染対策法

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土壌汚染対策法

大塚BASICp185~

土壌汚染は、大気汚染や水質汚濁などにより排出された重金属等の有害物質が土壌に蓄積することにより発生する(蓄積型汚染)

1890年代の足尾鉱毒事件による農作物被害問題
1950年代の富山県神通川流域のイタイイタイ病の原因となったカドミニウム汚染
1970年の公害対策基本法の改正時に典型公害に土壌汚染が追加され、農用地土壌汚染防止法が制定
2002年、市街地を対象に含む「土壌汚染対策法」制定
2009年、土壌汚染対策法の改正

環境基本法は土壌汚染を典型7公害の一つとして位置づけ

環境基本法の環境基準(環境基本法16条)として、土壌汚染に係る環境基準が定められている

→土壌汚染には、汚染された土壌から地下水への溶出を規制する観点からの項目として26項目の「溶出基準」があり、汚染された土壌の農作物への影響の観点から農用地に付加的に適用される3項目の「農用地基準」がある。「カドミニウム」と「砒素」は両基準に共通する項目であるので、土壌に関する環境基準は計27項目である

土壌汚染対策法の目的

目的:「特定有害物質」による土壌汚染に起因する人の健康被害の防止が目的(土壌汚染対策法1条)

「特定有害物質」:「鉛、砒(ひ)素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるもの」(土壌汚染対策法2条)

→ 特定有害物質には鉛、砒素、トリクロロエチレンほか、計25物質が指定されている

土壌汚染状況調査

土壌汚染対策法は、土地所有者等に第一次的に土壌汚染の調査義務を課している

3条調査

使用が廃止された「有害物質使用特定施設」の、工場又は事業場の敷地であった土地への調査(土壌汚染対策法3条1項)

→「有害物質使用特定施設」とは水質汚濁防止法に規定する特定施設であって、特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理する施設のこと

特定施設の使用廃止時に(水質汚濁防止法10条により特定施設の使用廃止には都道府県知事への届出が必要)、土地の所有者、占有者、管理者に調査義務が課せられ、汚染状況の調査をしたうえで都道府県知事にその結果を報告しなければならない(土壌汚染対策法3条1項)。事業者の特定施設の使用廃止は、都道府県知事から、土地所有権者等に通知される(土壌汚染対策法3条2項)

→ 無報告や虚偽報告の場合、都道府県知事はその者に対して報告や是正を命ずることができる(土壌汚染対策法3条3項)

3条2項の通知は取消訴訟の対象となる「処分」にあたる(最高裁平成24年2月3日第2小法廷判決)

「3条2項による通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる」(最高裁平成24年2月3日第2小法廷判決)

※3条1項ただし書きにより、関係者以外立入禁止の倉庫に利用するような場合などには、人が積極的に暴露する可能性がないため、都道府県知事の確認を得れば、調査が猶予されるが、この場合も土地の利用方法を変更しようとするときは都道府県知事に届出が必要(土壌汚染対策法3条4項)。届出内容によっては確認の取消しがなされる(土壌汚染対策法3条5項)

4条2項調査

環境省令で定める規模以上の面積の土地の形質変更の際に、届出が必要とされる(土壌汚染対策法4条1項)

→ 土壌汚染のおそれがある場合、知事は土地所有者等に土壌汚染調査を命じることができる(土壌汚染対策法4条2項)

※法定の調査がされていない土地であるが客観的には土壌汚染が存在する場合に対応するため、2009年改正で設けられた

5条調査

土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地には、都道府県知事は、土地の所有権者、占有者、管理者に調査を命ずることができる(土壌汚染対策法5条1項)。調査等を命ずべき者を確知することができず、かつ、これを放置することが著しく公益に反すると認められるときは、都道府県知事が自ら調査をすることができる(土壌汚染対策法5条2項)

指定調査機関

調査義務を負う土地所有権者等は、土壌汚染を指定調査機関に調査させ、調査結果を都道府県知事に報告する(土壌汚染対策法3条1項、4条2項、5条1項)

→ 技術的能力を有する事業者として、環境大臣が指定した業者が「指定調査機関」である(指定調査機関に関する規定は、土壌汚染対策法29条~43条)

区域指定と台帳管理

汚染除去の措置として掘削除去が必要のない土地でも、費用のかかる堀削除去が自主的になされていたという問題点を受けて、2009年改正により健康被害が生ずるおそれの有無に応じて、指定区域を2種類に分けることとなった

要措置区域

土壌汚染調査の結果、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合せず、その汚染が人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがある場合、都道府県知事は、その土地を「要措置区域」に指定する(土壌汚染対策法6条1項)

→ 指定された要措置区域は公示される(土壌汚染対策法6条2項)

形質変更時要届出区域

土壌汚染調査の結果、土壌汚染は判明したが、その汚染が人の健康に係る被害が生じるおそれがない場合、都道府県知事は、その土地を「形質変更時要届出区域」に指定する(土壌汚染対策法11条)

「形質変更時要届出区域」では土地の形質変更の際に、都道府県知事への届出が必要となる。届出に対して都道府県知事は計画変更命令を発することができる(土壌汚染対策法12条)

形質変更時要届出区域では形質変更の際の施行方法に制限が課せられる。汚染された土壌の飛散などによって近隣に影響を与える、あるいは汚染された土が搬出されて搬出先に汚染が拡大したりするなどのリスクが発生することを防止するため

台帳管理・情報収集

都道府県知事は、要措置区域の台帳及び形質変更時要届出区域の台帳を調製し、これを保管しなければならない(土壌汚染対策法15条1項)

都道府県知事は、当該都道府県の区域内の土地について、土壌の特定有害物質による汚染の状況に関する情報を収集し、整理し、保存し、及び適切に提供するよう努めるものとする(土壌汚染対策法61条1項)

要措置区域における汚染除去等の措置

要措置区域内においては、何人も、土地の形質の変更をしてはならない(土壌汚染対策法9条。汚染除去措置などは除く)

※環境省水・大気環境局長平成22年通知によると自然的原因により汚染された土壌についても規制対象になるとされる

都道府県知事は、要措置区域内の土地の所有者等に対し、相当の期限を定めて、当該要措置区域内において汚染の除去等の措置を講ずべきことを指示する(土壌汚染対策法7条1項)

ex. 汚染除去の措置とは、立入制限、覆土、舗装、汚染土壌の封じ込め、堀削除去など

→ 土地所有権者が汚染をしたわけではない場合も、土地所有権者に対して土壌汚染除去の指示がなされる。

→ 所有権者等は汚染除去の費用を、汚染原因者に求償することができる(土壌汚染対策法8条)

※ただし、当該土地の所有者等以外の者の行為によって当該土地の土壌の特定有害物質による汚染が生じたことが明らかな場合であって、その行為をした者に汚染の除去等の措置を講じさせることが相当であると認められ、かつ、これを講じさせることについて当該土地の所有者等に異議がないときは、汚染原因者に対して汚染除去の指示がなされる(土壌汚染対策法7条1項後段)

7条1項の指示を受けた者は、期限までに、汚染の除去等の措置又はこれと同等以上の効果を有すると認められる汚染の除去等の措置として環境省令で定めるものを講じなければならない(土壌汚染対策法7条3項)

→ 都道府県知事は、指示を受けた者が指示措置等を講じていないと認めるときは、その者に対し、当該指示措置等を講ずべきことを命ずることができる(土壌汚染対策法7条4項)。命令違反には刑罰(土壌汚染対策法65条)

※環境大臣は、要措置区域内の土地において汚染の除去等の措置を講ずる者に対し、助成を行う地方公共団体に対して、助成金の交付等の支援業務を行う「指定支援法人」を指定することができる。指定支援法人は支援業務に関する基金を設ける(44条~53条、 ex.財団法人日本環境協会)

都道府県知事は、汚染の除去等の措置により、要措置区域の指定の事由がなくなったと認めるときは、要措置区域の指定を解除する (土壌汚染対策法6条4項)

汚染土壌搬出に関する規制

「要措置区域」又は「形質変更時要届出区域」の土地から汚染土壌を搬出するには、知事への届出が必要。届出内容に対して知事は計画変更命令を発することができる(土壌汚染対策法16条)

汚染土壌の処理を業として行おうとする者は、汚染土壌の処理の事業の用に供する施設ごとに、当該汚染土壌処理施設の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない(土壌汚染対策法22条)

土壌汚染と民事訴訟

大塚BASICp463~

土壌汚染された土地を買い受けた現在の所有者が、売主に瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求する事例がある

→ 土壌汚染が隠れた瑕疵にあたるかどうかが問題となる

最高裁平成22年6月1日第3小法廷判決

「本件売買契約締結当時の取引観念上,それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されていなかったふっ素について,本件売買契約の当事者間において,それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず,本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても,そのことは,民法570条にいう瑕疵には当たらないというべきである。」

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