試験前暗記用レジュメ~民法~種類債権・目的物の特定

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民法暗記レジュメ

試験前暗記用レジュメ~民法~特定物債権
民法暗記レジュメ 特定物債権 意 義 ・特定物債権→特定物の引渡しを目的とする債権(400条)。 ・特定物→具体的な取引において,当事者が...

種類債権

意 義

・種類債権→一定の種類に属する物の一定量の引渡しを目的とする債権(401条1項)→その目的物を種類物または不特定物という。
・引き渡すべき物を種類と数量のみによって定めた場合が種類債権。
・種類債権→引き渡される物の個性は重要視されず,一定の種類に属する物の一定量であればどれでもよいとされるところに特色がある→種類債権では,債務者が引渡しを予定していた物が滅失・損傷しただけでは債務不履行にはならず,それと同種の物が市場に存在する限り,債務者は新たに同種の物を調達する義務がある。

目的物の品質

・種類債権の目的物について品質の違いがある場合,どの品質の物を引き渡すべきか問題となる。
・401条1項→第1に,法律行為の性質または当事者の意思(合意)によって決まる→①法律行為の性質によって決まるというのは,例えば,消費貸借(587条)や消費寄託(666条1項)において,返還すべき物の品質は最初に受け取った物の品質と同一でなければならないとされている場合である。②当事者の意思によるというのは、契約時または契約後に当事者が明示または黙示に品質を定めた場合をいう。
→第2に,法律行為の性質や当事者の意思によって品質が決まらない場合には,債務者は中等の品質の物を給付しなければならない→何が中等の品質であるかは一概にはいえず,取引上の観念や社会通念および信義則によって決定される。
*杉材の品質が特上・上・中・並・下の5等級に分かれている場合に,中間の上・中・並が中等の品質に当たるとした古い裁判例がある(大判大5・10・7民録22集1853頁)。

目的物の特定

種類債権の特定

・種類債権では,目的物が種類と数量によって抽象的に定まっているにすぎない→債務者が現実に引渡しをするためには,引き渡すべき物が具体的に特定される必要がある。そして,この特定された物が引き渡されることになる。
・種類債権の特定(集中)→引き渡すべき物が特定され,それ以後種類債権が特定された物の引渡しを目的とする債権に転換すること→当初は種類債権であったものが,これ以後は特定物債権とほぼ同様のものになる。

目的物特定の事由

当事者の合意
・債権者と債務者の合意→①債権者と債務者の合意によって給付すべき物を特定した場合,②債権者と債務者の合意で債権者または第三者に給付すべき物を指定する権利(指定権)が与えられ,これに基づいて指定された場合。
・このような合意は,401条2項には規定されていないが,契約自由の原則から当然に認められる。

債権者の同意を得た債務者の指定
・債務者が債権者の同意を得て給付すべき物を指定した場合(401条2項)→債権者と債務者が合意をして指定した場合ではなく,債権者が債務者に指定権を与え,それに基づいて債務者が指定した場合(通説)。

債務者の行為
・債務者が物の給付に必要な行為を完了した場合(401条2項)。
・物の給付に必要な行為の完了→債務者が物の引渡しのために必要な行為をすべて行ったこと。
・どのような行為をすれば必要な行為を完了したことになるのかは,債務の履行形態に応じて以下のように解されている。

持参債務の場合
・持参債務→債務者が債権者の住所に目的物を持参して引き渡すべき債務→種類物の引渡債務や金銭の支払債務は,特約がない限り,持参債務になる(484条)。
・持参債務の場合には,債務者が債権者の住所に目的物を持参して,債権者がいつでも受け取れる状態にしないと,目的物の特定は生じない→債権者の住所での現実の提供(493条本文)が必要であり,債務者が郵便や鉄道などの運送機関に託して債権者に向けて発送しただけでは特定は生じない(大判大8・12・25民録25集2400頁)。

取立債務の場合
・取立債務→債権者が債務者の住所に来て目的物を受け取る債務。
・取立債務→①債務者が引き渡すべき目的物を他の物と分離して,債権者が取りに来ればいつでも引き渡すことができる状態にし,②そのことを債務者に通知すれば,目的物の特定が生じると解されている。取立債務における特定のための行為と493条ただし書の定める「口頭の提供」,すなわち「弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告」をすることとは区別され,前者は目的物の特定のための行為であり,後者は債務者に債務不履行責任を免れさせるための行為であるので(492条参照),前者は目的物の分離を必要とし,後者は目的物の分離を要しないとされている→例えば,漁業用タールの売買で,売主指定の場所で引き渡す約定があり,売主が引渡場所を指定し,引渡しの準備作業をしただけでは,口頭の提供はあったとしても種類債権の特定は生じていないとした判例がある(最判昭30・10・18民集9巻11号1642頁)。

送付債務の場合
・送付債務→債権者または債務者の住所以外の第三地に目的物を送付すべき債務。
・第三地が履行の場所と定められているときは,持参債務と同様に,その場所での現実の提供が必要とされる。
・第三地が履行地ではなく,債権者の要請によって債務者が好意で第三地に送る場合が送付債務に当たる→この場合には,債務者が目的物を分離して第三地へ発送することによって,特定が生じる。

特定の効果

・目的物の特定以後は,種類債権は特定された物を引き渡す内容のものになる(401条2項)→特定によって次のような効果が生じる。

善管注意義務の発生

・債務者は,現実に引渡しをなすまで善管注意を払って,その物を保管する義務を負う(400条)。

目的物滅失による免責と危険負担

・目的物の特定以後は,債務者は特定された物を引き渡す債務を負うので,その物が滅失すると引渡債務を免れる→同種・同量の物を調達して引き渡す債務を負わない。
・物の滅失について債務者に帰責事由があれば,債務者は履行不能による債務不履行責任として損害賠償義務を負う。
・債務者に帰責事由がなければ,債務者は損害賠償義務を負わないが,債権者は危険負担における債権者主義により反対給付をする債務を免れない(534条2項)→種類物の売買でいえば,目的物の引渡債務を負う売主に滅失について帰責事由がなければ,売主は損害賠償債務も免れるが,引渡債務の債権者に当たる買主は代金支払債務を負担することになる(危険負担における債権者主義については批判があるが,詳細は契約法の教科書や参考書に譲る)。
所有権の移転

・特約がなければ,特定した時に目的物の所有権が移転する(最判昭35・6・24民集14巻8号1528頁)。

債務者の変更権

・種類債権における目的物の特定については,債務者は一度特定した目的物を他の同種・同量の物に変更することができるかということが問題なる。
・本来の特定物であれば,債務者が他の物を引き渡すことは認められないが,種類物であれば,もともと他の同種・同量の物を引き渡すことが可能である→債権者にとくに不利益がない限り,信義則によって債務者に特定した目的物を他の同種・同量の物に変更して引き渡す権利(変更権)が認められている(判例〔大判大12・7・7民集16巻1120頁〕・通説)→債務者に帰責事由があり,債務不履行による損害賠償責任を負う場合であっても,債務者は,他の物を引き渡すことによって責任を免れることができる。

制限種類債権

・制限(限定)種類債権→種類と数量のほかに一定の制限を加えて,目的物の範囲をさらに限定している種類債権の1種。
・通常の種類債権と比較して,制限種類債権には次のような違いがある。

履行不能の成否
・通常の種類債権→特定以前に目的物が滅失しても,履行不能にはならず,債務者は他から調達して引き渡す義務を負う。
・制限種類債権→特定以前であっても,その制限された範囲内の物が全部滅失すれば履行不能になり,債務者は,可能であったとしても,もはや他から調達して引き渡す義務を負わない→あとは,滅失について債務者に帰責事由があるか否かによって,債務不履行または危険負担の問題となる。

目的物の品質
・種類債権では,引き渡すべき目的物の品質は401条1項によって定まるが,制限種類債権では,目的物の品質は問題にならない。